喜楽亭ドリル 往復書簡の相手は実在人物
旅館アポニアは「親愛なるツーニェン」で始まる往復書簡の相手は、「陽子」「一絵」「トモ」と3名います。
それぞれ実在の人物です。
「トモ」は、新井知行さん(トモトシさんではないです)。
ドラマツルグ(作品解釈、脚本家と兼務が多い)、脚本翻訳、脚本協力をしています。
「一絵」は、アートコーディネーター、調査翻訳、脚本協力の鈴木一絵さんです。
「陽子」は、キュレーター、「能勢陽子」さんです。
今回のトリエンナーレ。途中で怪我もされて大変だったと思いますが、豊田会場の作品は大成功。特に喜楽亭は、豊田ならでは、いや豊田市しかできない作品でした。
また、この作品全体に関して、戦争問題や表現など細心の注意がされていることも分ります。
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【あいちトリエンナーレ「旅館アポリア」】は歴史と向き合う態度、のようなものを指し示している - これもあり、なんだ
このブログに、「調査・助言」をした辻田真佐憲の紹介があります。
喜楽亭ドリル 旅館アポリアの制作陣
旅館アポニアを制作した人々の紹介です。
喜楽亭の トリエンナーレ専用のキャプションは、玄関を入った駐車券の認証機の側にあります。それとは別に、この作品の制作スタッフの紹介が、玄関横の木の戸に貼ってあります。
声優さんだけでも6名の方が参加されています。
外国の方もいるのですべて検索でヒットできなかったのですが、あの振動するふすまやスクリーンをたてつけたのが設営のスーパーファクトリー。
喜楽亭は文化財指定なので、釘を打つことが出来ないのです。
少し古いが設営のスーパーファクトリーの紹介
展示の現場/08年10月:現代美術の制作、展示のパートナー:佐野誠(スーパー・ファクトリー)
プロの仕事だなと、つくづく思います。
そんな喜楽亭も会期が終われば、無くなってしまうのですね。
当初、熱さのせいか機器がダウンすることが多かったです。お気づきの方も多いと思いますが、どの映像作品も12分ぴったりで終わります。振動がきちんとシンクロするようになっているからで、どれか一つでも動かなくなると出来ないからです。
最近はないですが、もしも一つでも異常が発生すると、いかにもアジア的な陽気な音楽と調整画面が出て、また最初から画像が始まるフリーズ状態にも遭遇したことがありました。
喜楽亭ドリル 四ノ間で紹介される小津映画
自分は、小津映画を見たことはない。
(チャップリンはなぜか全作品を見ている。高校生の年末年始にNHKで特集をやっていたからだと思う。ただきっかけは高校の芸術鑑賞でモダンタイムズを見たことがきっかけ)
戦後の映画監督だと思っていたが、四ノ間でそうではないことを教えられた。
1932年(昭和7年)
貧困と不平等を現わした市民派の映画。子どもたちが「軍人」になりたいというシーンを紹介。
1942年(昭和17年)
1950年(昭和25年)
1952年(昭和27年)
お茶漬の味 - Wikipedia
軍歌 戦友の遺骨を抱いて 笠智衆
1962年(昭和37年)
私の想像ではあるが、小津の墓の映像以外の人物が出てくるシーンで顔なしのものは、これらの小津作品からうまく引用されていると思われる。
今後、じっくりと小津作品を観てみたいと思っている。
喜楽亭ドリル 一ノ間「波」 京都学派の面々
一ノ間だけは、必ず見て欲しいという作者の指示で並んでいただいて見ていただいている。
「波」の映像で終わるのだが、このアポニアで語られる全ての事柄がイントロのように紹介される。
喜楽亭の話から始まり、草薙特攻隊。戦時中の喜楽亭・・・戦後、この建物は移築されてきた建物だと分る。
後半、語られる上田閑照は京都学派の研究者。
また、大島康正は戦後の京都学派の担った。
海軍との協調は、高山岩男で説明されている。
今作品のキュレーターである能勢陽子氏によると、当初は京都学派を中心に日本の哲学者について作品を作ろうと作者はしていたらしい。
しかし、会場となった喜楽亭を調べていくうちに、特攻隊の話、小津とシンガポールの関係が出てきて、話に深みが出てきたらしい(詳細は明日の講演会で出ることだろう)
「あいちトリエンナーレ2019」トーク ホー・ツーニェン(出品作家)・浅田彰(思想家)を開催します! | ニュース | あいちトリエンナーレ2019
喜楽亭ドリル 二ノ間「風」宮内栄遺書
二ノ間で読まれる宮内栄の遺書は、このHPにもある「吾が前進」にあります。24歳で逝った命。非売品とあるところをみると、ご家族の自費出版だったのかもしれません。
喜楽亭で泊まった際、どんな夢をみたのでしょうか。移築されとは言え、当時栄が見ていた同じ景色の中にいて、四ノ間にいかないとカラーにならない画像の中に、しばしタイムスリップして栄の声を聞く錯覚になります。
旅館アポ二アで、映像は小津の作品から喜楽亭もたまたま料理旅館だったから創作なのではないかと思われるかもしれませんが、草薙特攻隊も栄も、喜楽亭も今ここにあるように、あの桜が咲く昭和20年4月もいたのです。
飛び立っただろう飛行機音の振動。一カ所に集中して音が出るマイクを通しての風の音。そして意味もなく吹く風。
まさに「二ノ間」は風の間。
廊下を出て隣の部屋にいかなくても「親愛なるツーニン」の声と同時に隣の部屋に移動すればよいです。
もしも二ノ間が混雑していれば、2階の四ノ間に移動してもよいかと思いますが、三ノ間は二ノ間の2番目を見てからの方がよいでしょう。
喜楽亭ドリル 三ノ間「虚無」京都学派と松尾芭蕉 2本作品があります
三ノ間「虚無」自体が、京都学派の説明そのものになっている。
この虚無自体を説明できればと思って、メモを取ろうとしたが、あまりにも暗く書き取ることができなかった。
また端にいたのだが、後から来た方が物だと思ったのか、こちらに持っている案内の紙をやたらに近づけてくるので、思わず「います」と声をかけてしまった。それほど、前半暗い。
声と字幕になるのだろう文字を追う。そのうちに紫の照明が薄くつくので、部屋は格子戸で中に二ノ間で紹介された神風号のプロペラが見えてくる。
紫から全体が見える黄色になると一つ目の映像が終わる。しかし、その後松尾芭蕉の句の紹介。
実は、三の間は12本の物が2本ある。しかし、暗く廊下に5人くらいしか並んでみることができない。作者もこの部屋を全員に店用とは思っていないのだろう。
最初はエアコンもついていなかったが、つくようになったが閉所恐怖症の人にはお勧めできない。
ただ、映像以外にもこのような表し方を作者がすることも分るだろう。
喜楽亭ドリル 四ノ間で流れる軍歌
四ノ間は3つの8畳間の間を外し、24畳の大広間になった真ん中の部屋にスクリーンをそれぞれ張って、2つの映像を紹介している。
カタカタ鳴るのは、お気づきの方もいるだろう、そのスクリーンははめ込まれた枠が振動し、それがふすまや障子に響くのだが、音響効果も大きい。
最新の機器を使っている。
また、畳の色も暗いから分りづらいだろうが、黒い色の畳が入っていて、ますますその暗さを際立たせている。
フクちゃんの映像の後ろでも小津の映像にも、一貫して軍歌が流れている。海ゆかばと軍艦マーチ(軍艦行進曲)しか聞取られないが、様々な音が交差している。
海行かばは、今回名古屋市美術館で展示されている藤井光の作品を観て知った。
まだ100年も前のことでないのに、知らないことが多すぎる。もっと色々なことを知らなければならないし、そのことを教えてくれた作品がトリエンナーレにはある。