あいちトリエンナーレ2019 私的ガイド 

私的にあいちトリエンナーレのご案内をします。情報の詳細は公的なものでお確かめください。

2019/8/26 中日新聞 夕刊から <文化彩々> 確かな声 

愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」。今月中旬のある日、主会場の愛知芸術文化センターの展示をぐるりと一巡したところで、スタッフに「お願いします」と一枚の用紙を手渡された。 感想や意見を書くアンケートだ。実行委員会がこれを始めたのは、慰安婦を象徴する少女像などを展示した「表現の不自由展・その後」の中止に抗議し、海外作家が相次いで、自作の展示中止を要望したタイミング。来場者の声を英訳し、作家に伝えることで、慰留を図ろうとしていた。

 不自由展を巡る一連の騒動では、世の中に想像以上に不確かな情報があふれていると実感させられた。特にインターネットでは、目に余る行為が散見された。無関係の作品の画像が出品されているかのように出回り、勘違いした人の怒りを誘った。三年に一度の開催にもかかわらず、複数の人が「毎年楽しみにしていたのに」と書きながら、不自由展を批判していたのにも驚いた。毎年と毎回を間違えたのかもしれないが、ファンを装ったのならば悪質だ。

 既に一部の展示は一時中止されたが、作品内容の変更で抗議を伝えた作家もいる。十月十四日の会期末まで、作家もスタッフも闘い続けている。一人でも多くの人が鑑賞し「確かな声」を寄せてくれるよう願った。

 (谷口大河)