中日新聞 朝刊 10月5日 佐藤翠さん紹介
<美術> 佐藤翠「鏡のロイヤルブルークローゼット1」
2016/10/5 朝刊
◇佐藤翠「鏡のロイヤルブルークローゼット1」(「あいちトリエンナーレ2016」名古屋市・長者町会場、八木兵錦6号館ビル2階=23日まで)
鮮やかな青に染まった鏡に描かれた洋服やバッグ、ハイヒールの靴。クローゼットを主題に絵画制作を続ける佐藤がトリエンナーレに出展した新作=写真=は、おしゃれな人の洋服だんすをのぞいたような華やいだ気持ちをもたらす。
佐藤は名古屋市出身の三十二歳。名古屋芸術大在学中に自分しか描けない絵は何かを考え、販売店で働くほど好きだった服飾品を選んだ。鏡をキャンバス代わりにする手法は「展示空間を作品に取り込みたい」と昨年から挑戦。油彩とアクリルで描いた絵のすき間にのぞく鏡面が鑑賞者の姿を映し、反射した光を床に散らす。青いクローゼットと展示室の間には確かに、不思議なつながりが生まれている。
植物をイメージした色鮮やかな抽象画も展示。「花や木の美しさには、装飾の原点を見いだすことができると思う。クローゼットと合わせることで、とらえ方が広がれば」。華やかな表現世界には、まだまだ奥行きが広がっていそうだ。
(喜)