あいちトリエンナーレ2019 私的ガイド 

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<美術> あいちトリエンナーレ2016「今村文(ふみ)展」 8月17日中日新聞朝刊より

<美術> あいちトリエンナーレ2016「今村文(ふみ)展」 

2016/8/17 朝刊

 ◇あいちトリエンナーレ2016「今村文(ふみ)展」(八木兵錦6号館3F=名古屋市中区錦2、10月23日まで。8月22日、9月12日、10月3日は休み)

 名古屋・長者町の繊維街。いたって飾り気のない商業ビルの一室に、細やかな花が咲き誇る。直径一・七メートルの円形パネルを埋め尽くして描かれた蜜蝋(みつろう)画=写真。顔料を温めたロウで定着させるこの古い技法に、今村文(一九八二年愛知県生まれ)は、大学時代から取り組み続ける。

 展示作のモチーフは花。だが「花を描きたいというより、抽象的な世界をつくるため」と説明する。生まれる前の、あるいは死ぬ瞬間の、自分が世界と溶け合う状態を絵として存在させるために選んだ題材なのだと。

 水彩画のコラージュ「中有の花々」も、人が死んで次の生を受けるまでの七週間を「この世に咲いていない花」で表した。一見は実在する植物の標本に似るものの、しかし世界のどこにもない七本の花が、作家の想像力によって静かに息づく。

 本展は、十一日に始まった「あいちトリエンナーレ2016」の展覧会の一つ。海外からの作家などによる話題作に注目が集まる中で、それに埋没しない存在感を放つ。

 (品)